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おいでよ甲奴へ愛ターンyouターンいい移住

人とのご縁を大切にしながら、自分自身も大切にする 丸野元広さん

こんにちは!おいでよ甲奴へ愛ターンyouターンいい移住です! この連載では、広島県三次市甲奴町に移住をした人の移住にまつわる、リアルな話のインタビュー を掲載していきます。

「都市で働くのが疲れた・・・自然の近くで生活してみたい・・・」
「自分はこのままの仕事でいいのかな?他の生き方はあるのかな?」
「移住ってトラブルがあったりするって聞くけど大丈夫?」
「そもそも仕事ってあるの?収入とか下がるんじゃない?」

そんな、踏み込んだ話も聞いていきます! 移住をするかどうかに関わらず、自分の生き方に悩んでいる方にぜひ読んでいただきたいと思って います。

今回は、2002年に甲奴町に移住をされた丸野元宏さんにインタビューをしました!移住をしてから20年。さまざまなご経験をされている丸野元広さんに、移住までの経緯や甲奴町での暮らしについて伺いました!

聞き手は東京から2020年に広島県呉市に移住をした福崎陸央( 合同会社 逍遥学派 )です。

丸野元広(まるの もとひろ)
広島県生まれ。高校卒業後、自衛隊へ。2年間の勤務後、任期満了のため退職。着物屋に就職し広島市内で勤めた後、家族と共に、2002年に甲奴町にIターン。 林業などや草刈りなど、さまざまな仕事を行いながら、地域の困りごとに取り組む。

家族の時間を大切にするために、移住を決断

ーー:今日はよろしくお願いいたします。今回は、移住を検討されている方に 向けて、甲奴(こうぬ)に移り住まれて20年の丸野さんのこれまでのお話を伺えたらと思います。

早速ですが、移住を検討した経緯を教えてください。

丸野さん :私自身、元々広島県の因島(いんのしま)出身で、高校まで育って、陸上自衛隊に2年勤めてちょうど任期満了になったので、次の仕事をどうしようかと考えていた時に、知り合いが着物屋を紹介してくれて、これからお店がたくさんできるということで転職しました。奥さんとはその着物屋がきっかけで、出会いました。 そこから転勤もあったのですが最後は広島市内に住んでいました。8年ほど住んでいて、娘が小学校1年生の時に移住をしました。

ーー:移住をする上で、お仕事に悩む方も多いと思うのですが、丸野さんは甲奴に移住されてからのお仕事はどのようなことをされましたか?

丸野さん :着物屋はキッパリです。 移住前に自分達の店を出してみたりもしましたが、広島市内で働いているときは、家族でご飯食べるのも夜の8時とか9時で、遅くまで起きて、朝家を出るとほとんど家族といられる時間はありませんでした。 今の暮らしになってからは6時くらいに夜ご飯を食べて7時半にお風呂に入って、やることがないから9時くらいに寝るんですけど(笑) 移住後は、過去に自衛隊にいたこともあり、山仕事に興味が湧いたので始めました。 奥さんも介護の資格を取っていたので職に困ることはありませんでした。

着物の着付けのワークショップが今でもやられていたりします。

ーー:ありがとうございます。今お話を伺っているの場所は、丸野さんご夫妻が営業されているカフェですが、こちらのお店をやるまでのお話を聞かせてください。

自然の美しさと心地よさに、初めて気づいた

丸野さん :元々は町営住宅で暮らしていたのですが、20年目にそのお家を出ることになって。 そのタイミングで妻から、カフェをやってみたいという話がでてきて。 年を取るとできる仕事がだんだんなくなっていくと思ったので、長くできる仕事ってなんだろうと考えた時に、お家でできる仕事が一番いいなと思い、家でカフェができる物件を探していたら、この場所がヒットしたので今の場所に引っ越しました。

ーー:なるほど。カフェとなると色々な人が集まる場所にもなっていったと思うのですが、実際にオープンしてみて、発見や楽しさはありましたか? 丸野さん :カフェは妻がやっているのですが、山を見続け春から夏に変わっていく風景の色、夏から秋、秋から冬にかけて白くなり、春になっていく時に緑になっていく色にとても感動したと話していました。

庭先のテラス席からは山並みと田んぼが見えます。

ーー:春にここに来させていただいた時に、外でご飯を食べさせていただいたのですが、本当に気持ちよかったです。


丸野さん :ありがとうございます。ここのお店の名前も妻が「空と風の家」と名付けたのですが、空き家に風を入れたこと、空と風がすごく気持ちがよかったので、これはみなさんに感じて欲しいなと思ったからと話していました。


ーー:今も心地よい風が吹いていますね。

人とのご縁を大切にしながらも、自分自身も大切にする

丸野さん :お店を開いてから近所の人との関わりが濃くなった気がしますね。町の会合や、お友達とのランチとか、いろんなことできてもらって、コミュニティの輪になっていて、それが自分にもつながってきています。人との縁というか。そういうのは、やってなかったらなかったと思いますね。
空き家の改修も、自分達で解体したり畳を変えたりしました。その時も縁が広がりました。この家も元々は無理して買おうと思っていたのですが、大家さんから草刈りが大変だったのでそれを家賃替わりにお願いしたいというご提案をいただきました。 その時に田舎の住み方って色々あるんだなと思いました。 元々住んでた方もこの家でカフェをやりたかったようで、意見が一致してスムーズに今の状態にすることができました。

ーー:人とのつながりやご縁があって、今があるんですね。 自分の話になってしまいますが、僕は東京のど真ん中の町で育っていて、近所のお店もすぐに変わってしまうし、マンションに住んでいても気づいたら隣の人が変わっていたりして。横のつながりが全然ないということが当たり前だったので移住するときに、田舎で暮らすのってちょっと怖いなと思っていたのですが、丸野さんはいかがでしたか?

丸野さん :やっぱり不安はすごくありました。周りの人と上手くやっていけるのかなと。でも自分の意見もしっかり言っていきたいなと思っていました。無理してしまうと周りからの色々な期待も出てきてしまう。

ーー:実際に今移住を考えている人たちも、失敗してしまったらどうしようと、とても不安だと思います。人とのつながりは良い部分もあれば、近いからこそ、ときにトラブルが起こることもあると思うのですが、丸野さんが意識されていることはありますか?

丸野さん :うんうん。そうですね。田舎ってすごく多いですが、伝統を大事にしたいとか。それこそおじいちゃんおばあちゃん3世代の人も多いので、昔はこうだったという話はあるのですが、自分たちも育った環境が違っているので、地域の慣習に無理に合わせようとするとしんどくなったりすることもあります。 そういう意味でできないことは出来ないとしっかりと断る勇気が大切だと思います。

ーー:自分自身のことも大事にするということでしょうか。 甲奴に住んでいて不便さは感じられますか? 都市の場合だと、住む場所を選ぶときも、職場が近いとか、近所にコンビニがある・・・とかが意識されると思います。 そう言う便利さと比べると甲奴は不便ですよね。でもお話を伺っているとあまり問題視されていないというか。

丸野さん :不便さはそこまで感じないです。交通の便でいったら甲奴町は、尾道松江道 甲奴インターがあるので、そこから四国に行くのでも今治でも広島に行くのにも2時間かからないくらい。仕事は、通うにしても、行ける距離なのかなと思います。 むしろ住居も安くて、駐車場もタダで、かかるお金はそんなにありません。買い物行くのに車は30分くらい走らせないといけないですが、そもそもあまり買い出しにも出向かないです。食材、特に野菜は甲奴の中では新鮮なものがとても安く買えますから。

町内会では草刈りがコミュニケーションの一つ

ーー:なるほど。車の運転さえできればかなり自由が利きそうですね。 仕事について、こうした地域で意識することはありますか?

丸野さん :草刈りを通して地域に入っていく、田舎で生きる上での武器って何か考えた時、山間地は草刈機が武器なんじゃないかと思っています。

ーー:草って一気に伸びますよね。道路一つとっても当たり前に使っていますが、誰かが草を刈ってくれているからこそですよね。人が少なくなれば使えなくなる道も出てきそうです。

丸野さん :そうですね。特に僻地になると、家よりも畑や空き地が多いので、大きな問題の一つになっています。なので、町内会で言うと草刈りがコミュニケーションの一つになってきますね。絶対に役に立ちます。草刈機の使い方さえわかれば、どんな人でもすぐに入っていけるので、それができるようになる場を作っていきたいと思っています。

ーー:草刈への熱意がすごいですね!田舎って意外と困り事が明確にあったりして、仕事には困らないですよね。

丸野さん :そうですね。木の伐採や草刈りのお仕事は、自分で金額も決めるんですよ。休憩も自分で決めながらその日の目標まで頑張ればいい。自分の裁量がすごく大きいんです。でも喜んでもらえるんですよ。 それに、草を刈りは目に見えて綺麗になるので、他の方にもやってもらえたらなと思っています。 できたという自分に自信を持てるようになれるようなことをしていきたいんです。 例えば、少し鬱屈としていた人が、草刈りができるようになって、それでなおかつ人からも喜ばれることによって、自信になればいいなと、そうすることで田舎にある耕作放棄地がどんどんなくなっていくんじゃないかと思います。 私が一番やりたいのは草刈りをスポーツにすること。楽しさを知っていただいて、田舎の荒れたところを減らしていきたいんです。 スポーツ連盟を立ち上げて全国で教えていきたい。草刈り体験会などを10年近くやっているんですが、なかなか広まらなくて、これはもう自分に問題があるのかなと・・・

仕事ではなく、自分や家族を優先にできる

丸野さん :話は脱線しますが、田舎の仕事って何がいいかって、街と比べたら、今日どうしてもやりましょうというものが少ないので、休みは取りやすいです。森林組合は雨のときはみんなで話して、「今日はもう休もうか。」となったりする。その日はお金にならないけど、仕事ではなくて自分や家族を優先にできるってことは実感しましたね。 広島市内で働いているときは、月に2回しか休みがなかったり、何のために働いているのかなと思うことが多かったですね。 子供の運動会も働く日だと休めなかったりね。その分、責任感のある仕事ではないから給与は少し安いのかもしれませんが、自分のペースでできて、休みたい時に休んで、行きたい時に行きたい場所に行けるっていうのがいいのかなと。

ーー:都市では関係者が多すぎて自分が休んだ時の影響が大きいから、どうしても仕事優先になってしまいますよね。 収入が減っても、出ていくお金も少ないと思うのですがいかがでしょうか?

丸野さん :移住してから、収入っていうのは正直少なくなったんですけど、 前の街で暮らしている時に比べたら、すぐに遊びに行くってことが減って、街にいるといろんな所へ行けるのでお金が減るんですが、ここにいれば収入少なくても野菜も頂いたり、安く買えたり、美味しい米食べたり。のんびりゆっくり時間を楽しめるからこっちの方が豊かに暮らせてるなと思います。

ーー:ありがとうございます。地域、特に小さな集落だからこそ一人で生きているのではなく、人と人との関係性の中で一緒に生きていく感覚が大切なのかなと思いました。

移住をする前でも、移住をした後でも気軽に相談に来てほしい

ーー:最後に、甲奴に移住を検討されている方にメッセージをいただければと思います。

丸野さん:自分の場合はもう23年住み着いているので、色々気軽に聞きにきていただきたいですね。移住する前でもいいですし、移住してからでも相談しにきてほしいです。移住者カフェとか、気楽に話できるのを地元の人とセッティングして、コーディネートしながらやっていきたいと思っています。 女房もカフェの中をいろんなことで利用してもらうことで一緒に楽しんでいくってことをやっていきたいですね。

ーー:外から来ても既に居場所があるのは心強いですね! 本日はありがとうございました!

編集後記

移住をすることは、国内だったとしても、全く違う文化の場所で一から関係性を構築することに近いものだと思います。特にIターンのように自分自身のルーツのない場所に住むとすれば尚更ですが、丸野さんからは地域との関係性をとてもポジティブに築いていらっしゃるのだと感じられました。
一方で、できないことについてはしっかりと断るというお話もとても重要なポイントのようです。地域の中で昔から続けられてきたお仕事は、地域を維持していくためにはとても大切なものですが無理をしてやってしまうと自分自身を苦しめることにもつながります。
常に自分を主語にしながら、地域の方々と真摯に関係性を構築するために、時には断る。自分も実践していきたいです! また、田舎は生活のコストが低く、地域の方も協力してくれるからこそ、実は自分のやりたいことのチャレンジがしやすいのではないかと、インタビュー後の話で出てきました。
草刈りの話をしているときの丸野さんはキラキラとしていて、夢中になれることをみつけるということも、とても大切なことだと改めて思いました。

聞き手:福崎陸央(合同会社逍遥学派)
編集・撮影:合同会社逍遥学派
後援:甲奴町振興協議会連合会